憂一

Open App

『カラフル』

祝祭の夜、少年と少女は露店の並んだ通りを歩いていた。
道化師を模したお面や香辛料が薫るミートパイなど、五感を刺激する品々が一堂に会する。
その中に一際、彩に溢れた店があった。飴屋である。
「ねえ、あれ食べたい。」
少女が少年の袖を引っ張って飴屋の一点を指す。指の向く先には、七色の飴が置かれていた。
「お、お嬢ちゃんお目が高いね。それは東の山の麓で取れるいろんな果実をたっぷり使った特製の飴ちゃんだ。味はもちろん絶品だが、それだけじゃあない。ほら、持ってごらん。」
露天商のおじさんは、少女に七色の飴を渡した。
「あ、軽い。」
少年の方を向いて少女があどけなく微笑む。
「そうだ、こいつは糖をじっくり溶かして漉してを何度も繰り返して余計なもんを全部飛ばしてあるから、ものすごく軽いんだ。」
露店商の言葉を聞きながら、少女は飴の串を上げ下げしてその軽さを楽しむ。
「それはサービスしてやるから、しっかり味わってくれな。お嬢ちゃんみたいな可愛い子が食べてるのを見たらみんな買いに来てくれて繁盛間違いなしだ。」
露天商は片目を瞑って少女たちを送り出した。
少年と少女は再び祭りの喧騒の中へと歩みを戻していった。
彼女たちの道先に花火が上がり始めた。空を彩る花火と手元を彩る飴。2人の行先を祝福しているようだった。

5/1/2024, 10:41:50 AM