「未来時計」
なかなか来ないバスを待ってる最中に、雨が降ってきた。幸い屋根があるしあと20分もすればバスは来るからと、スマホを片手に暇を潰していた。するとスマホの向こう側に誰かの足がみえる。僕は顔をあげると
「こんにちは」
優しそうな笑みを浮かべる老人の姿
「こんにちは」
挨拶して会話するのかしないのか迷っていると
「バスはもう来ないようだよ」
「え?」
まだ来ないの間違いじゃないのかと思ったが
「君は運良く救われたようだね」
「はは、、そうですか」
失礼かもしれないけど、少しボケてるのかもしれないな
「これをみてご覧」
「はあ」
老人が腕を差し出すと見たことのないような腕時計をつけている。数字が午前11:14を差した途端に赤くピカピカと点灯している。
「これはなんですか?」
僕が尋ねると老人は深刻な表情で目をつむる
「君が乗ろうとしていたバスが事故にあったことを知らせてるんだ」
「そんな!!」
そんなの嘘に決まってる。だいたい定刻より8分遅れるって通知があったし。僕は急いでスマホを開いた
「…うそだろ」
hohoニュースの速報で僕が乗るはずだったバスが、すれ違いざまにトラックと正面衝突して、崖から転落したと。現在救助中だが、けが人や死者は多数いると…
「おじいさん何者なんですか?」
「私はこの未来時計の後継者のひとりだ。これを引き継いでからは、危険を回避するよう先回りして対象者に伝えるのが役目。」
「だからおじいさんはバスの事故を回避させようと僕の前に現れたんですか?」
「そうだ。だがバスが遅れたことが幸いした。もし定刻通りにきて乗っていたら、君はここにはいない」
バスの悲惨な光景を想像して鳥肌がたった
「運命は最初から決まっているんだ。だが、それを回避できるのは未来時計の役目」
おじいさんはそう言うと立ち去った。後日、僕の自宅に未来時計が届いた。僕も後継者となったのだ
お題:最初から決まってた
絵里
8/8/2023, 2:49:42 AM