…ピロン
人気のない図書館に通知の音が響く。
何だろう、と君がスマホを覗き込む。
「10分後に、豪雨…予報……?」
ああ、よくある当たらないやつ、と私はこっそり思う。
しかし君は違った。
「ほらもう帰らなきゃ、急ごうよ」
君の自転車置き場まで付いていく。
「後ろに乗って」と君は言う。
罪悪感を少し感じたが、ワクワクする心には負けた。
坂道を風を切って走る。
君の楽しげにはしゃぐ声が前から聞こえる。
しかし、生憎あの天気予報は的中してしまった。
頭の上でバケツをひっくり返されたような感覚。
君のはしゃぎ声は悲鳴に変わり、服はずぶ濡れ。
それでも君は諦めず、私の家へと力強くこいでいく。
そんな後ろ姿は、私には光のように輝いて見える。
「ありがとう。送ってくれて助かったよ。」
「全然いいよ。ところで、雨はいつ止むの?」
「……明日の昼くらい。」
これは真っ赤な嘘だ。もう夕方には止むのに。
君を家に上げる口実が欲しいだけなの。
「まあ、もう少しこいで帰るよ!!またね!」
「……」
そっちかーい。
…はぁ、期待した私が馬鹿だ。
いつも私ばかり宙に浮いている。
それでも、私だって力強く諦めずにいる。
君にとっての光になるまで。
#自転車に乗って
8/14/2024, 12:24:05 PM