小絲さなこ

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「フラれた幼馴染に胸を貸す」


彼女が先輩にフラれた。

彼女の想いが通じなかったことに、苛立つ。
なんだあの野郎。こんな可愛い子から想われて何が不満なんだ。俺ならこんな風に泣かせたりしないのに。

彼女が縋って泣くのは、幼馴染の俺で──そのことに苛立つし、安堵している。

包み込むように背中に腕を回し、ぽんぽんと軽く叩く。
このまま強く抱きしめてしまいたい。
だが、それが出来ないからこそ、彼女は俺の側にいるのだろう。

男女の友情が成立すると思っているのは、彼女だけ。
想いが溢れて眠れない夜を過ごしているのは、俺だけ。


「ありがとう。あんたが彼氏だったら良かったのに」

俺もそう思ってるよ。
同じIFだけど、そこにある思いは別方向だ。
それでも、そう思ってくれるだけで、今は充分。そう言い聞かせる。

たぶん、今夜は眠れない。


────眠れないほど

12/6/2024, 7:36:05 AM