香星ヨル

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 雪の舞う朝だった。
 街はまだ眠りについているようで、不思議な気持ちがしたのを覚えている。
 まるで、この世界に僕一人しかいなくなってしまったような…。
 まるで、出会ってきた人々全てに捨てられてしまったような…。
 自分の中で何かが弾けて、無性に駆け出したい気分になった。
 親はまだ寝ているのか、階段をおりても朝食を作る音がしない。
 掛けられたコートを引っ張って取り、袖を通す。すぐに大きくなるから、と最近買ってもらったそれは僕には少し大きい。
 そんなことも、こんな静けさの中では特別なものに感じられた。
 一層、胸の奥がドンドン叩かれる。

 僕は走り出していた。



―微熱―

11/26/2023, 10:51:40 AM