夕日なんて、特に意図して見ない。
気づけばとっくに落ちて夜になってるし、空を見上げる時はいつも曇りか雨。
天気なんて、気にするのは自分が濡れるか濡れないか。
青空だって、ちゃんと見るのはドライブの時くらい。
運転してたら空なんて見る余裕ないし、助手席にいて手持ち無沙汰だからなんとなく見上げて言うのだ。
「空がきれいだね」と。
青空はきれい。空色は好きだし、雨上がりに架かる虹も好き。
天に突き抜ける飛行機雲も好き。
まるでラピュタがそこにあるかのように大きな入道雲も、時折ピカピカと雷を走らせる黒い雲も嫌いじゃない。
そう、空は嫌いじゃない。
でも、夕日を見るのは本当に稀。
前にちゃんと見たのはいつだっただろうか。
そうだ。
恋人に酷い振られ方をした後のことだった。
私は人に弱っている姿を見せるのが嫌いだから、一人で泣ける時間が限られていた。
仕事を終えて、家路の途中の海水浴場の駐車場に車を止めて、誰にも見られないように泣いていた。
何故海水浴場の駐車場なのかというと、当初は運転中でも涙が堪えられなくて、これは事故ると思い最初に車を止めた場所がたまたま近いところで止めることができた海水浴場の駐車場。
季節は初夏だった。
冬であれば職場を出たら外は真っ暗だったが、初夏だったから時間的には夕暮れど真ん中。
結局、夕日が眩しいのと、外が明るいもんだから真っ暗なら良かったのにと夕日に文句も言っていたが。
初めての恋人にとんでもない振られ方をしたのも、あんまり珍しい話ではないのかもしれないが、私にとっては稀なことで。
そこに稀な夕日が重なって。
どちらもあまり好きではなくなってしまった。
この話に特に落ちがあるわけじゃないけど、仕事やらなんやかんやで忙しいと、日々に追われて見えなくなるものが沢山あるよねって話。
夕日なんてその中の一つで、夕方なんてみんな夕食の買い物に、帰宅ラッシュに、子供のお迎えだったりで空を見上げる暇はないのかもしれない。
私にとっては好きじゃないものだけど、そういう好きじゃないものも、立ち止まってたまに見てみると、そこに気づきや成長のきっかけがあるのかもしれない。
私にとってはそれが夕日だというだけの話。
4/7/2023, 12:44:21 PM