小説
おばみつ※現パロ
夏から秋へと季節は移ろい、日差しが疎ましくなくなった、とある日の午後。
彼女は窓際に座りながら、ついさっき取り込んだ洗濯物を畳んでいた。
秋と言ってもまだ日中は暖かく、窓を開けていても風邪をひきそうなことはなかった。
「蜜璃、手伝うよ」
食器を洗い終わり、鼻歌を歌う彼女を手伝おうと歩み寄る。
「わ!ありがとう小芭内さん!」
俺を見て微笑む彼女はこの世界に咲くどんな花よりも美しいと思う。
その途端、ぴゅぅ、と少し冷たい風が部屋の中を舞った。
少し驚き、俺は目を瞑る。しばらくして風が収まり目を開けると、未だ目を瞑る彼女の頭の上には、白いカーテンが乗っていた。
「…あら?カーテン、頭に乗っちゃったわ」
俺は彼女から目が離せなかった。
網戸越しにやわらかな光が差し込むと、カーテンと彼女の髪を煌めかせる。
半透明なカーテンは彼女の顔を薄く覆い隠していた。
それはまるで、
「……結婚式、みたいだな」
つい口から出た言葉。何となしに、ぽろと出た言葉。
その言葉を聞くと彼女は、小さな可愛い顔をぶわりと朱に染め上げた。
「…………お嫁さんみたい?」
リンゴのように熟れた顔をこちらに向け、はにかみながら問う姿を見ると、俺は先の発言にようやく気がついた。
彼女と引けを取らないくらい顔を赤くすると、俺の口は情けないほど小さな声で彼女の問いに答えた。
「世界一かわいいお嫁さんだよ」
10/16/2024, 11:48:07 AM