こんな夢を見た。
大切な子がわたしの手を引いて、一本道を歩いている夢。
何も話さないで、ただただ歩く。あたたかくて心地が良かったから、この静かで綺麗な時間を邪魔したくなくてわたしも黙っていた。
途中で振り返ったあの子の表情だけはどうしても見えなかった。
いや、本当は見えていたと思うのだけれど。
いつもみたいに困ったように呆れたように笑っていた気もするし、悪戯っ子な表情をしていた気もする。それとも泣きそうな顔だったかもしれない。
覚えていたはずなのに、記憶がどんどん零れていってしまって、思い出せない。
手のひらに降ってきた大粒の雪がとけてしまったとか、捕まえた桜の花びらが風に飛ばされてしまったとか。たしか、そんなときにも今と似た気持ちになった。
なんとなく、窓の外を見た。
快晴でも曇りでもない、何の変哲もない晴れた空だ。
雪が降るにはもう遅いし桜が咲くにはまだ早い季節。
それでもあの喪失感を探しに散歩に行ってみようと思った。
(こんな夢を見た)
1/24/2024, 7:50:05 AM