「二人だけの秘密ね!」
そういってはめられた、ねじった紙でできた指輪。
あの日私達は、誰にも内緒で結婚の約束をした。
あれから15年過ぎた。
引き出しから出てきたそれを見て、あの日のことを思い出した。
結局、彼女は数年前に他の男と結婚した。しかもデキ婚。
二人だけの秘密が、一人きりの固執に変わった瞬間だった。
人は変わるし、どちらにしてもこの国では同性婚はできないことも知っていた。それまでの間、約束を確かめなかった私も悪い。仕方がないことだった。
けれどやっぱり裏切られた気持ちになって、デキ婚という事実がさらに心を抉って、式が終わったその日のうちに別れを告げた。
しばらく傷は癒えなかったけど、新郎の友人とご縁があって、交際することになった。
親からは反対されて家を追い出されたけど、逆に都合がよかった。
結局、これだけは捨てられないんだよな…
そう思いながら指輪を眺めていると、彼女が帰ってきた。
ただいまとお帰りを言って、抱き締め合う。
さあ、ご飯を食べてお風呂に入ったら、一緒にパートナーシップについて話し合おう。
【二人だけの秘密】
5/3/2024, 2:47:35 PM