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#ミッドナイト

―――


『腹減ったな』


そう言う此奴に着いてきたのは、何故だったか。
街明かりが沈んでいるからか、吐いた息がより白く見え
室内で暖まった身体から、熱が逃げていくのが分かった

辛うじて、手袋のままポケットに突っ込んだ手はマシだと思う

「...お前は、家で待ってても良かったんだぞ?」

玄関口以来の、此奴の声。
普段なら俺一人に買いに行かせるくらいなのに、しおらしく聞いてくる様子が、なんだがおかしかった。

「ふっ、丁度俺も夜風に当たりたかったんだよ」
「ふーん...こんなさみぃのに」
「お前だって、甘味欲しさに出てんじゃねぇか。また血糖値上がるぞ」
「あーあー聞こえない聞こえなーい、最近は落ち着いてっからいーの」
「まぁマジでダメなら殴ってでも止めるから良いんだが」
「いや怖ぇよ?...クシュッ」

そうして話していると、くしゃみが一つ

「おい、だから手袋しろつったろ」
「いやすぐ見つからなかったし、手袋一つ無かったって良いかなってよ〜...ヘクシュ...!」
「言わんこっちゃねぇな...」

顔を見てみると、鼻先がほんのりと赤い。
寒いから当然か...多分俺も似たようなもんだろうしな。
そんな事を思いながら、俺は此奴に片手を差し出した

「......飴ちゃんは持ってねぇ〜よ?」
「違ぇだろ、手だよお前の」

貸せ、っと無理やり手を取り、一緒に上着ポケットへと突っ込んだ。

「...いや、なにこれ」

困惑気味に聞かれる。
その顔は、先程見た時より赤く見える。

「...つか、なんかその、ほら、あの...」
「何時ものハキハキしたテメェはどうした?お眠か?」
「うるせぇな...!普段こんな事しねぇだろうが...!!」

恐らく怒っているのだろが、振りほどかれなければ相手は満更でも無い。
...っと、何かしらの本に書いてあったのを思い出し、いつもの感じで続けた。

「何時もはお前が恥ずかしいとか言うから我慢してんだ。こんな人気のねぇ時間でくらい良いだろ」
「恥ずかしいとは言ってねぇだろ!」
「じゃあこれからは真昼間でもやるぞ?」
「ぐっ...」

俺がそう言うと、折れた様でそれ以上は何も言われなかった。
......此奴は嫌がるからやらねぇが、本当は周りに見せつけてやりてぇと思う。
本人に自覚は無いが、変な所でモテやがるから。

だったらせめて、こう言う二人きりの時に慣らしをするくらい許して欲しい。
そして続けて行けば、真昼間でも折れるだろう

「はぁ...ったく、早く菓子買って帰るぞ」

そう言うと、此奴は足早に手を引かれた。
...まぁ、今はこれで十分だ
と、俺は歩数を合わせる様に踏み出す。

ミッドナイト...とか、何とか。
空に浮かぶ星々が俺らを見てる様だと...有り得ない妄想をしながら。

「俺は少しくれぇ寄り道してもいいんだがな」
「俺は早く買って食いてぇからダメだ!」

1/26/2026, 12:28:05 PM