「おっとぉ……」
バイクに乗ろうと駐輪場に行ってみると、タイヤの隅何かがいた。身体を屈めて見ると恐ろしく小さなにゃんこが数匹、身体を寄せあって震えていた。
その姿に胸がきゅっとなった。
「どうしたんですか?」
俺の後に家を出てきた恋人が俺の肩越しに子猫を見つめた。
子猫の様子に驚いた彼女。それはそう。
多分、生まれてそんなに経ってない。ここにいたらおそらく死んでしまうだろう。
俺は彼女を見つめると彼女の瞳の中にも強い意志を感じられた。彼女も動物が好きな方だ。きっと、同じことを思ってる。
「ごめん、家に連れてくよ」
「もちろんです!」
過去に動物を飼ったことがあるようで、この状況がマズイことは理解していたようだ。
俺が上着を脱いで猫たちを落とさないように包む。そのついでに、ここにいるのは三匹いるのが分かった。
一匹の衰弱が激しい。
「先に鍵、開けますね」
「ありがとう!」
家に帰ると、通販で使われたダンボールを作り直して、タオルを敷く。俺は一匹ずつ箱に入れてあげるけれど、一匹が動くことがなくてやばいと肌で感じる。命が抜けていくのを感じられた。
俺は立ち上がって、スマホから動物病院に連絡をした。
まだ早いけれど……出てくれ!!
その裏で、彼女はお湯を沸かして湯たんぽを作ってタオルの下に入れていた。
『はい、朝からどうしたの?』
俺は堰を切るように事情を話し始めた。
その後は、許可をもらったので子猫を動物病院に連れていく。結局、彼女にも全部突合せてしまったな……。
……あ!!
職場に連絡するのを忘れていたことに気がついて、背中に冷たい汗が滝のように流れる。
その表情を見た彼女がふわりと笑って背中をさすってくれた。
「大丈夫ですよ。私、事情を連絡してあります」
本当に気の利く彼女です。
子猫たちは、一匹は大変だったけれど甲斐甲斐しく世話をしたので、奇跡的に持ち直す。
引き取りたい気持ちはあったけれど、今回はたくさん話し合って見送ることにした。
縁があったとはいえ、生きものを迎えるのには覚悟がいる。覚悟がないわけではない。それでも今ではないと思ったからだ。
その代わりに、引き取ってくれる飼い主を必死で探して、良い人たちと巡りあわせられた。本当にホッとしている。
「ちょっと寂しいですね」
「うん……でも、ごめん」
いつか、動物を飼いたいけれど、今は彼女との時間を大事にしたかった。
俺は彼女とは将来を見据えている。
家族になって、家族が増えたら……いつかね。
おわり
一八三、子猫
11/15/2024, 12:56:36 PM