ある古い書物の一節にて。
1年前、いままでにないものをみた。
私は木こりの仕事をしている。ある日、森に仕事へ出向いた時、夕刻だった。
地響きが聴こえ、怖くなった私は木の影に隠れた。いつもなら何事かと身を乗り出すのだが、なぜか出来なかった。その地響きは聴いたことのない、大きな音だ。
木の影に隠れ、少しだけ隙間から見ると、あの伝説の怪物がいた。
あのレーシーだ。森にすむ精霊だ。このレーシーは我々人間からは有害な精霊だ。ただ、見かけることはほぼない。伝説化した精霊だ。
私は見るなりさっと体を小さくする。その怪物がどこかへ行くまで。
何事も無かったが、いままでの人生で1番恐ろしく、見ることの無いものを見てしまった。
これは1年前の話だ。
ー オリジナル小説・ドゥコ作中の書物ノン・ドゥカ・ドゥコから ー
6/16/2023, 10:04:11 AM