黒山 治郎

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視界の下で道路から陽炎が手を振る夏
水流に揉まれてくたくたになった脱皮がら達は
群れを成しては青嵐に撫でられ順に波となり翻る
半袖のトンネルを抜けて来たひと束の風は
人懐っこい犬の様に此方へ駆け寄り頬を舐めていた

どこかでは見知らぬ誰かも同じように日々を営み
清々しくも少し憎らしい夏へ呆れつつも
敵わない、なんて口元を綻ばせて
澄んだ空を愛でているのだろうか

あぁ、そうだ…今度の休日までに
お気に入りの半袖が乾いたならば
出来るだけ飛びっきりのお洒落でもして
その誰かを探しに出掛けてみようかな。

                    ー 半袖 ー

5/28/2024, 4:19:04 PM