からっぽ

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お題「突然の君の訪問。」

どうしてそこに足を運んだのか、
そしてなぜその扉を開けようと思ったのか、
それは僕にもわからなかった。

ただ、なんとなく。本当にただ''なんとなく''

トントン廊下を歩いて、
ガチャリと下げたドアノブの、
その先でちょこんと座っていた。

過ごしてきた時間と何も変わらない、
優しい顔をしてこちらを見ていた。

僕が泣いていたときも、いつだって
そんな顔をしてそばにいてくれたよね。

「……っ」

パッと飛び込んだ景色は、
見慣れた自分の部屋の天井だ。

フラリと同じ部屋の扉を開けてみても、
冷たい空気が体を撫でるだけで、
君はどこにもいなかった。

「…ごめんね。ずっと泣いてた僕のために、
夢の中に会いに来てくれたの?
あの日、ちゃんとお別れを言えなかったもんね。
ありがとう、大好きだよ」

静かに部屋の扉をひいて、バタンと時間を進めた。

8/28/2022, 2:20:13 PM