もんぷ

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tiny love

 この関係がいつからか、いつまでか、なんて知る術はない。そこはかとなく鼻をつく甘い匂いは、自分ではない人のもの。きっと昨日まではとびきりの美人が横たわっていたそこに自分がいることがいつまでも不思議だ。

 自分たちは付き合っているわけではない、というのはきっと彼との共通認識。だって、付き合っているのなら他の人の影にもっと怒ってもいいはずで、確かに良い気持ちはしていないけど、不明瞭な自分たちの関係だからこそ何も言えないのが事実で。そもそもなぜ彼の隣にいるのかが分からない。彼の周りによくいるような女性達のように容姿が整っているわけでもなく、彼のように人を虜にする色気や、財産、秀でた話術があるわけでもない。何もかもが見合わない。ただ、少し古くからの幼なじみというだけで何かと家に呼びつけ、同じところで眠る。そっと唇をつけるだけで満足そうに彼は眠りにつく。他の女性と嫌というほどしているような行為は一切無く、ただそれだけ。

 多分小学校に入るよりも前、記憶の奥底の小さな手は優しく自分の頬を撫でて、そのまま顔を近づけて柔らかく口を合わせた。結婚も、恋人も、恋愛も、その存在の名前だけ知っていたぐらいの幼い自分と彼が、その行為の意味を知るよりも早く、軽い気持ちで始めてしまったのがきっかけ。この子どものお遊びのような関係が、終わりもなく今でも続いているなんて笑えないだろう。それでも続けてしまうのはなぜだろうか。今日もその柔らかさに触れながらそっと目を閉じる。外側だけ大人になってしまった自分たちが、あの日のように何も考えずに息をつけるのがその布団の中なんて、すごく馬鹿馬鹿しい。

10/30/2025, 1:23:32 AM