愛し合う二人を、好きなだけ

Open App

小説
迅嵐※友情出演:弓場



最近、眠りにつく前に、嵐山はいつもうつ伏せになって枕の下に手を入れる。
何故だかはよく知らなかった。ただ、安心するからかな、とかひんやりして気持ちいいのかな、とか思ってた。

ある日、何となしに聞いてみた。

「嵐山ってさ…なんで最近寝る前に枕の下に手入れんの?」

「えっ…………いや別に」

普段とは違う歯切れの悪い返しに、おれはモヤモヤしていた。おれに隠さなきゃいけない物があるってこと?まさか浮気…?その枕の下に浮気相手の何かが隠されているとか…?いやいやそんなまさか。

だけどその日からずっと、頭の中では枕の下に何があるのかばかりを考えてしまっていた。

任務が終わり帰路に着く。部屋を覗くと、嵐山は既に寝息をたてていた。

ふと、頭の方に目を移すと枕がズレており、そこから一枚の紙がはみ出ているのに気がついた。

「…」

悪い未来は視えないけれど、浮気相手の何かだったら嫌だし。まぁ、嵐山に限ってそんなことないだろうけど?確認するだけだし。

嵐山が見せたがらなかった物を勝手に見るという最低な行動の言い訳を頭の中で呟きながらも、そっと紙をつまみ上げてみる。

「……え」

それは写真だった。しかもそれは今しがた写真をつまみ上げた張本人、おれの写真だった。…この画角の撮り方は弓場ちゃんか…?しかも写真の中のおれは締りのない顔をしている。

「……ん……じん…?」

おれの声で起こしてしまったのか、嵐山は眠たそうな目を擦りながら身体を起こす。

「…あれ、……ん?……あ!いや待て迅、それ!!」

おれの手の中にある写真に気づくと眠気が飛んだのか、嵐山はこちらに勢いよく手を伸ばしてきた。

それを視越してひらりと躱す。

「嵐山、これ、なぁに?」

「……」

手を伸ばした状態でぴたりと固まる嵐山。
目の前でひらひらと写真を揺らすと、困ったように眉を下げほんのりと顔を赤く染める。

「…………お前の、写真」

「なんで枕の下に入ってるの?」

「…………」

なかなか答えようとしない嵐山に、おれはゆっくりと顔を近づけてみる。

距離にして数センチ。嵐山の瞳に映る自分が中々に締りのない顔をしていて、もしかして写真の中のおれは嵐山を見てたのかな、とぼんやりと思った。

「…………会えない日が多いから…枕の下に入れたら……お前の夢が…みれるかと思って……」

おれから目を離さず、健気に瞳を揺らしながら答えるその姿は、あまりにも可愛くて心が蕩けそうだった。

「……っはぁ〜。浮気じゃないのか、良かった…」

「…浮気?そんなのする訳ないだろう?」

ぼふ、と嵐山の身体に顔を埋め息をつく。そりゃそうだ。だって嵐山だもん。そんなことする訳がない。
………でも、

「ちょっとだけ、心配になっただけだよ」

「というか、勝手に見るな。せっかく隠してたのに…」

「悪かった。ほら、生の悠一くんですよ〜」

嵐山の程よい筋肉のついた細い腰を抱くと、上からチョップが降ってくる。

「今日はもう寝るぞ」

「えー」

「えーじゃない」

「ちぇ」

渋々起き上がり、部屋着に着替えると嵐山の待つベッドへと向かう。

子供体温の嵐山が入るベッドの中は暖かかった。

「あ、こうすれば夢みれるんじゃない?」

「…………」

嵐山の頭を俺の胸元に押し付けてしばらくすると、背中に温かい手が回ってきた。

「ちなみにどんな夢をみたかったの?」

「……言わない」

「素直にイチャイチャする夢って言えばいいのに」

直後、俺は背中をつねられ、非常に情けない声をあげるのだった。

11/2/2024, 2:18:28 PM