「木漏れ日の跡」
地面に映し出された、木漏れ日の跡を見つめながら歩く。
足取りは少し重い。
朝、家を出たときは準備万端できれいに着飾っていたはずなのに…。久しぶりに休日に1人で出かけていて、ランチを済ませ、ショッピングを楽しもうとする時だった。運悪く、男の人がぶつかってきて転んでしまった。
「わりー!地味すぎて見えてなかったわ!」
「ふふふ、ちょっと!失礼じゃない。ごめんね〜、私の彼が。ふふ」
若いカップルは、そう言うと笑いながら歩いて行ってしまった。呆気に取られて、言葉も出ずに固まっていると、店員さんが手を取って起こしてくれる。
「ありがとうございます」
「いえいえ、大丈夫ですか?嫌なカップルですね」
足がもつれて、再び転びそうになって気づく。ヒールが折れている…。それに気づいた店員さんは、お店の靴をいつくかおすすめしてくれて、折れたヒールを恨めしく見ながらも買う他に選択肢はなかった。たまたま興味があり見ていた、お高めの店の靴を。
可愛いが、予算を軽く超えてしまったので、本当に欲しかった服を断念した。
「あーあ、ついてない」
良い気分で家を出たのに、こんな思いのまま帰ることになるなんて…。ランチと、購入したのは靴だけ。
自然とため息が溢れる。街路樹の端っこで、足を止めた。
休日の昼間だが、この街路樹に歩いている人はまばらであった。
「どうしたの?」
「え?」
突然後ろから男の人の声が聞こえて、振り向く。
「あ、やっぱりハルネさんだ。」
「山下さん?」
「こんな所で会うなんて、びっくりしたね!昨日仕事で見かけたけど…私服姿は初めて見たね。可愛い」
「え、」
「あー、セクハラになっちゃうか。人を褒めるのも、難しい時代になったよね。」
同じ職場だけど、部署は違う山下さん。毎日挨拶を交わす程度で、こんな風に話をしたのは初めてかも知れない。山下さんは整った顔をしているし、仕事もできて話しやすいと女性社員の中では、良い噂をよく聞く。私より5歳年上だと聞いた。山下さんの同僚に、私と同じ苗字の人が居るからだろう。挨拶をする時に、私のことを名前で呼んでくれるので、山下さん推しの女性社員から、関係を問われたこともあるのだ。
「こうやって話をするのは初めてだね!今からどこか行くの?」
「いえ、帰ろうと思ってます…色々あって…」
今日あったことを、大まかに話して見る。柔らかな風にそよぐ街路樹に合わせて、ゆらゆら、地面の影が揺れている。
「それは災難だったね。…ねえ、良かったら僕に付き合ってくれない?僕も今日は1人で出かけていたんだけど、用事も終わってしまってさ。お茶しようよ!前からハルネさんと話してみたかったんだ。どう?」
「私と…ですか??」
「嫌…かな?」
「い、嫌じゃ、ないですけど…」
なんだか恥ずかしくなり、上げた顔をまた下げる。
木漏れ日の跡と、2人の影がゆらゆら揺れていた。
髪をかき上げる。
「ありがとう」
山下さんの声が、優しく降ってきた。
少し近づいた、山下さんの影を見て、私はそっと顔を上げた。
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書き終えたら、山下さんがストーカーみたいになってる。笑
ストーカーじゃないよ、本当にたまたま出会ったんだよ。
11/15/2025, 1:23:37 PM