Ayumu

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 花嫁の投げたブーケが偶然手元に降ってくる。
 物語みたいな展開を、まさか現実で体験するとは思わなかった。
「よかったじゃない」
 友人はそう言ってくれるが、たぶん花嫁の知りあいからは恨まれているんじゃなかろうか。というかこういうのって普通仲のいい人間めがけてトスするもんじゃないの? 私は花婿側の知人だし。
 花を包んでいる白い紙を指先でなんとなく弄ぶ。
 ……結婚ねえ。
 正直、まったく興味がない。少なくとも今は自分自身のことに精一杯で、そこまで考える余裕がない。
 もちろん、過去には積極的に動いたこともあった。そのすべてが私にとっては最悪な終わりを迎え続けて、いつしか熱を失った。
 ……たぶん、あれがなかったら、細々とでもいい出会いってやつを探していたかもしれないわね。
 うっかり思い出しそうになった奴の記憶を振り払うように、友人を呼び止める。
「これ、あげるよ」
「え、いいの?」
「私より結婚したくてたまらない人のところに行ったほうが嬉しいって」
「そう?」
 嬉しそうな友人の手に渡ったブーケは、私の目には眩しく見えた。


お題:花束

2/9/2023, 9:59:39 PM