この病室からは、町の明かりがよく見える。
海と山に囲まれた町の、山の中腹に隔離されたサナトリウム。それは、小さな町全体を見下ろすようにして建っている。
記憶が正しければ、あの辺には従兄弟の家があるし、あそこには滑り台とブランコしかない小さな公園があるはず。それから、ひときわ明るいあれは、きっと町役場。遅くまでお勤めご苦労様です、と心の中でひとりごちる。
いつもと同じ夜景。代わり映えのない景色。
それが退屈だなあなんて思えるくらいに、いつの間にか自分は成長していた。そのことに、喜びと、少しの寂しさをおぼえる夜だった。
9/18/2023, 5:05:48 PM