たやは

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終わらせないで

宇宙は広い。
小さい頃からスペースサッカーの神童と呼ばれ、サッカーでは誰にも負けたことがなかった。小学生で名門チームの下部組織に所属し、高校生の時にはトップチームでレギュラーとなっていた。トップチームでもエースストライカーとしてチームの勝利に何度も貢献してきた僕は、スペースサッカーに嫌気がさしていた。
何をやっても上手くいきすぎて面白くない
のだ。

そんな僕のドリブルの足元からボールを奪い取った選手ガいた。今まで、ドリブルを止められたことなどない。
奴のチームは名門でもなんでもなく、人類とスペースノイドが混ざったいわゆる雑草チームだ。奴だけでなく正確なアーリクロスを上げてきた奴もクロスの精度は名門のそれと変わらない。分からないものだ。

僕が井の中の蛙だったとは思ってもみなかった。宇宙は広い。この試合、思い通りに行っていないが、それでも楽しい。
あと10分で試合終了の笛がなってしまう。
まだまだ試合がしたい。終わりたくない。
終わらせないで欲しい。
今まで水の中で、もがき苦しんでいたが、やっと息のできる場所にたどりついたのだ。

最後のコーナーキックで蹴ったボールは、ゴールキーパーの手をかすめ、弧を書くように曲がった。しかし、ゴールポストに弾かれ点数にはならなかった。あの双子のセンターバックの1人が足を出したのか。僕の弾道を変えるなんて誰もできなかったことだ。

僕たちのチームは雑草チームに負けた。負けチームのエースストライカーは、点数が取れなかった責任を取らなければならない。僕は名門チームを辞めた。蛙が川に飛び出したのだ。

明日からは雑草チームのエースストライカーとしてスペースサッカーを続けて行こう。僕の知らない世界が広がっている。

11/28/2024, 2:09:47 PM