「あの人、好きな人いるんだって」
今にも死にそうな絶望的な顔でそう溢した彼女に「お前だよ」と言うのを我慢して「え!そうなんだ!?」と白々しく返す。私の技術レベルなしの演技にも気付かず彼女はそおなの…とやはり死にそうな顔で呟いた。
「その人、真面目で何にでも一生懸命なんだって」
「聞いたの?」
「聞いたの…。それで、ちょっと鈍感で抜けてるとこもあって、そういうとこが可愛いんだって」
特徴言い過ぎだろと思いつつも顔には出さずそうなんだ~とやはり白々しく返す。そんな私の声が聞こえているのかいないのか、彼女はさめざめと顔を覆った。
「だってさぁ、それって絶対みなちゃんじゃんね…」
「ヴァ」
馬鹿かよ、と嘘だろ、が混ざった私の奇声にやはりやはり気付かない彼女はちょっと鈍感なんて可愛いもんではないのである。
5/31/2025, 12:35:03 PM