夢路 泡ノ介

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素直になれない事はある。
そしてどれだけ悔いても、言えなかった頃には戻れない。
言葉を交わす傍らに、脳裏に散らつく言葉が浮かんでも口にする事を憚った。
感情は霧に包まれ、次第に濃くなり、そして伝えずじまいで留まった。
頬を濡らしても時は戻らない。
冷え切った肌に触れても、振り向かれる事もない。
黄斑した身体に心は乱れ、慟哭した。
寝顔は安らかだった。苦しみから解かれただった。
だけど淵の底へと沈みゆく心には、あまりに強すぎた。
だからこそだ。
届かなくてもいい。返ってこなくてもいい。
二度も繰り返して悔いるなら、今この場で伝えよう。
一生触れられなくなる前に、震えた声で耳元で告げた。

【ありがとう、ごめんね】

12/9/2023, 2:39:44 AM