萌葱

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夢というのはいつだって奇想天外で、急に始まり急に終わるものだ。場面転換も目まぐるしく、人が出てきたと思ったらいつのまにか消えていたりする。
それに自分の願望にひどく影響された、自分勝手で都合のいいもののことが多い。他の人の夢がどんなものなのかは知らないが、少なくとも僕にとっては夢ってそんなものだ。
「楽しいね」
彼女はにこやかに微笑みながらそう呟いた。
そんなことありえるのだろうか。
明日になれば人類は全て滅亡するというのに。呑気に踊って、それを楽しいと感じるなんて。


こんな夢をみた。
明日隕石が降るとかなんとかして、人類、いや、全てのものが滅亡すると言う日の前日に、彼女とただひたすら踊り続けると言う夢だ。夢なのだから、どうして地球やらなんやらが滅亡して人が死んでいくのかは曖昧だったが、取り敢えず、夢の中の僕は明日死ぬということだけははっきりと確信していた。
そんななか、彼女と踊り続けたのだ。映画とかで王子と姫がくるくると踊っているあれを踊り続けた。踊っていた場所は、海の目の前の白い砂浜、ショッピングモールのど真ん中、学校の階段の踊り場だったりと気づいた時には場所がよく分からないところに変わっていた。おかしなことだが、夢の中の僕はそれには疑問を抱かなかった。
ただ、僕が考えていたのは、どうして彼女は僕と踊ってくれているのだろうということだった。普通、明日死ぬとなると、家族や恋人、親しい友人と一緒にいることを選ぶのではないか。僕は彼女の家族でも恋人でも、特別親しい友人でもない。なのに彼女はどうして僕と踊り続けているんだろう。

僕はどうして、ただの友人の一人である彼女と、踊り続けているのだろう。

1/23/2023, 3:03:21 PM