―伝えたい―
伝えたい。
その言葉を考えるだけで、
少しだけ息が苦しくなる。
最初は、
ただ、君に届けばいいと思っていた。
君が困っても、
笑ってごまかされても、
それでも、
「言えた」という事実だけで、
私は救われると思っていた。
でも。
違った。
伝えたいと思うたび、
君との「今」が、
どんどん脆く見えるようになった。
君は、何も変わらない。
いつも通り笑って、
いつも通り話して、
いつも通り、
私の隣に立つ。
それなのに私は、
一人だけ、
崖の端に立っているみたいになる。
もし言ったら。
この距離は、
もう二度と戻らない。
今みたいに、
名前を呼んでもらえないかもしれない。
今みたいに、
何でもない話で笑えないかもしれない。
今みたいに、
「また明日」って言えないかもしれない。
それが怖い。
怖いのに。
それ以上に、
このまま何も言わずにいる未来のほうが、
もっと怖い。
私は、
君の人生に、
何も残らないまま消えるのが怖い。
数年後。
君が、
別の誰かの隣で笑っていても。
その記憶の中に、
私は、
背景の一部にもいないかもしれない。
それが。
どうしようもなく、
痛い。
伝えたい、は、
もう願いじゃない。
ただの、
恐怖に近い。
私は今日も、
君の隣で笑う。
喉の奥で、
言葉が、
形になりかけて、
何度も崩れる。
もし今、
君が、
少しでも、
私から離れたら。
私はきっと、
この気持ちごと、
どこにも出せないまま、
腐らせてしまう。
それが分かっているのに。
私は、
何も言わない。
何も言えない。
だって、
君にとって私は。
季節が一つ巡れば、
思い出す理由も。
きっと、なくなる。
そのくらいの存在だから。
だから。
君といられなくなるなら。
このままでいい。
題名:【重ならない輪郭】
2/12/2026, 10:51:15 AM