※物語です。
俺は昔からなんでも出来た。
小学生の頃から続けているサッカーでは
高校生になった今エースとして活躍しているし
勉強も上位20%以内にいつもいる。
人脈も広いし優しくて明るい彼女もいる。
人生イージーモード
_ずっとそう思っていた。
ある日の部活帰り俺の方に車が突っ込んできた。
横断歩道を渡る一瞬のことで視界が眩い光に包まれた。
その瞬間から暗闇に突き落とされたのだと思う。
ずっとつけっぱなしのテレビをぼーっと見つめる。消毒臭い病院の中、落ち着かないほど真っ白なベットの上で流れる時間を過ごす。
あの日事故にあって、次に目が覚めた時にはここにいた。母さんも父さんも嬉しそうに俺を見ていて、助かったんだとほっとした。それもつかの間足に違和感を覚えた。聞くと今後サッカーをするのは難しいということ。それ以外は覚えていない。
ずっと順調だった。
桜のように開花した才能。
青葉のように鮮やかな青春。
紅葉のように色付いた生活。
それなのに、今はまるで枯葉のようだ。
踏みつけられたら粉々になってしまいそうな朽ちた日々。
希望を見いだせずにただ過ぎ去る日に身を任せている。
突然スマホが鳴った。俺はずっと見る気になれず返信をしていない。それでも反射的に目を向けると彼女から写真が届いていた。
少し気になり開いてみるとそこには枯葉から覗く小さなつぼみが写っていた。
それは彼女が落ち込んでいた時に桜を見せたくて行った河川敷で撮った写真だ。
お目当ての桜はまだ咲いていなくて慌てる俺にこの写真を見せてくれた。
「こんなに小さいのにすごいね」
彼女は興味深そうにそういった。
そんなことを思い出しているとスマホが振動した。
春はまた来るよ!
その言葉に俺は気が付いた。
四季は巡っていることを。
2/20/2024, 10:42:26 AM