ルーカスが再び目を開けると、暗闇が広がっていた。
一瞬もう治ったかと思ったが、すぐに頭がキリキリ痛み出した。
昼なのか夜なのか。
今が何時かもわからない。
鬱陶しげに寝返りを打った。視界に入ったのは、閉じ切ったカーテンだった。昨日の昼はカーテンの隙間から光が漏れていたが、今は光が見えなかった。
昨日の夕方から雨が降っているらしい。その時は知らなかったが、今は部屋で寝ていても聞こえるくらいうるさい雨が降っている。
あの日も……あの時も雨だった。
ルーカスは、顔を枕に埋めてうつ伏せになった。
あの時とは違う。
雨漏りとは無縁の立派な屋敷。シミもシワもないシャツとズボン。焼きたてのパンに具だくさんのスープ。それに加えて夜は日替わりで肉か魚料理が出る。おまけにおやつまでくれる。
今寝ているベッドだって、まだ父親と母親がいた時に住んでいた家のそれと比べても、段違いだ。
本当に、医者なんか呼んでくれるのだろうか。目が覚めたらあのバラック小屋に戻されるのではないか。
もちろん、あいつらがそんなことをするはずないとわかっていても、熱が下がれば追い出されるのではないか。そんな不安が心を蝕んだ。
……雨、早くやんでくれないかな。
柔らかい枕で耳を塞ぐようにして、顔を押さえ付ける。ルーカスの意識は再び沈んでいった。
5/26/2023, 7:20:44 AM