透明なゆびさき
もう何もつかめないこの手が たしかに握るもの
それは春の陽射し
君と釣りの帰りに 川に落ちたとき見た太陽
夏のソーダのきらめきも
君に騙されて 拭きこぼした滴
遠い校庭で 笑う君の高い声
何年かあとには おとなの声になってしまった
駆け出していく君の影が遠ざかる
それを踏めなくならないように 懸命に追いかける僕
通り過ぎた全てのことを握りしめている
今と未来の先に起こることは もうつかめない
けれど 多分 君の心は握りしめている
透明なゆびさき
たぶんそれは とても冷たいだろう
ときおり 泣いている君を見かける
僕のせいじゃないかと思う 指が冷たいから
君の心を出来れば手放したい
でもやり方がわからない
君の心は今と未来の前にある
僕のために
僕が君を つかめなくなるために
ただ 忘れてほしいと願う
君が今と未来の先に行くために
自転車の乗り方
軌道を外れてガラスを割るボール
二つに割って食べるアイスキャンディ
季節外れの線香花火
僕はもう十分すぎるほど
握りしめているから
3/13/2025, 3:41:38 PM