あなたの澄んだ瞳は、世界を変えることは出来ないけれど、世界を変えたいと願っている兵士の心を癒すことは出来る。
ただ、そばにいるだけで。
命を賭して、人ならざる行為に身を捧げる者達へ。
その澄んだ瞳に何を見るのか。
過ちを繰り返す人類の愚かさを、夕暮れに小石蹴る少女の切なさを。
子どものように澄んだ瞳で、この薄汚れた世界を見回せば、きっと幼き時代に、精霊と交わした約束さえ思い出す。
こんなはずじゃなかった。こんなはずじゃなかった。
濁りゆく世界は、あなたの瞳が映し出すリアル。
故郷を捨てて、大人になるためのプロットを経て、すべてがうまくいく魔法はないと知り、澄んだ瞳に陰りが生まれた。
あの日、両親に見送られて、遠く新しい世界を目指していた私はどこへ行ったのか。
道を誤ったボクサーのように、がむしゃらに生きることに疲れ果てた夜。
闘志と汗にまみれたその瞳は、どこまでも澄んでいて、誰よりも真実を見据えていたのに。
そっと今、リングを降りる。
澄んだ瞳で見つめられたら、もう一度すべてをやり直したいとさえ思えた。
人の子として生まれ、同じ世界に生きて、隔てるものなど何もないのに、あなたの瞳はフェイクのガラス玉。
濁るはずもなく、綺麗に磨き上げられて、世界の現実をありのままに映し出す。
残酷な、生きるに値しない世界を。
私は今日も、生き続けるために、濁った瞳で世界を見下ろしている。
7/30/2024, 12:05:32 PM