るに

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誰かに必要としてもらえるだけで
よかったのに。
誰も必要としてくれないし、
こっちを見てくれないから、
いつの間にか見えなくなっちゃった!
いやぁ、透明人間ってやつ?
女風呂でも覗きに行こうかな。
私女だけど。
どうやら姿は見えずとも
声は聞こえるらしい。
車に轢かれそうになった時に、
うわっと声を出したら
周りの人がきょろきょろしてた。
それを利用して
人で遊ぶことにした!
真夜中。
誰でもいいから声をかける。
ねえ。
ちょっと。
そしたら大体の人は後ろに向かって
あなたは誰なの、とかなんとか言う。
面白そうな人は着いていくべし。
この第一声で決めて。
数日もしたら向こうから声をかけられる。
ねえ。
誰かに私のことを認めてもらった、
ここにいるってわかってもらえたと思って
嬉しくて返事する。
はぁい。
そしたらその人はびっくりした目で
こっちを見てくる。
しまった。
姿が見えてる。
太陽の光を跳ね返さなかった肉体のことは
腕についたトランシーバーが
姿が現われていると教えてくれた。
キラリと光っていたのだ。
太陽の光を跳ね返して。
最初の頃は逃げ出していた。
けど最近はここでにこにこしながら
もう片方だと思われるトランシーバーを
差し出したら
もっと面白いと思い、
そうしている。
しかし姿が見えた時の
心のざわめきは
消えるはずもなく。
慣れないものだなぁ。
ご老中や占い師には
多分この類の人間を見たことがあるし
知っているんだろう。
目の前を通りかかると
必ず目が合うし、こっちに会釈までしてくる。
"Good Midnight!"
誰にも相手されないというのは悲しいけど、
姿が見えていた時にはできなかったこと、
そう、
見知らぬ人で遊ぶことができて
私は今の生活がすこぶる気に入っている。

3/15/2025, 12:54:40 PM