12/23「プレゼント」
娘へのプレゼントなんて、今更思いつかない。
再婚した妻の勧めで贈ってみる事にしたが、娘の好みなど見当もつかなかった。
「余計なものもらうよりは、結局現金が一番なんじゃないか? それかお前が選んで渡すとか」
「それはそれ、これはこれ」
妻がぽんぽんと肩を叩く。
「最初から大当たりする必要はないと思うわよ」
「いや、そんなことないだろ…」
しぶしぶネットショッピングサイトを開く。何だったかのメーカーの化粧品だかを買いたいと言ってた気がするが、まるで思い出せない。
妻が笑う。
「そうやって考えることが、あなたにとって大事かもしれないから」
エスパーではない俺は、彼女の心中の言葉を聞き取るすべはない。
(所要時間:9分)
12/22「ゆずの香り」
「ふんふふ〜ん♪」
鼻歌交じりにフォークでざくざくと万遍なく穴を開け、お風呂の蓋を開ける。白い湯気の上がる湯船に放り込んで、また蓋を閉める。
週末のクリスマスイブのためのチキンを仕込んで、
「そろそろいいかな?」
脱衣所で脱いで風呂場に入り、
「寒っ!」
壁に熱いシャワーをかけて温める。
「さて、お待ちかね★」
風呂の蓋を取ると、ふわりと柚子の濃い匂い。
「ん〜、いいね!」
最高にゴキゲンな冬至!
…あ、カボチャ煮付けたのに食べるの忘れてた。
(所要時間:7分)
12/21「大空」
7機の戦闘機が基地を発つ。あの中のひとつに、あいつがいる。
病弱で何もできない俺の代わりに、あいつは飛行機乗りになった。国のために人を殺すなんてできる性格じゃなかったのに。
大空に飛び立っていく機体を見守り、そっと無事を祈る。ここから長く生き別れる事になるのを知らずに。
(所要時間:6 分)
12/24/2023, 12:47:18 AM