傾月

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ここは何処だろう
辺りは明るい
空間全体が柔らかな金色に包まれている
暑くも寒くもない
足元を見ると一面の花畑
白い花たちが光を浴びて柔らかな金色に光る
もしかして死んだのか?
そう思い至ったが如何せん記憶が無い
少々困ったが致し方無いので歩くことにした
花畑に寝転がるという選択肢もあった
だが歩かなければならない気がしたので歩くことにした
歩き始めてはみたものの何の変化も無い
歩けども歩けどもずっと明るい空とずっと輝く花畑が続く
どこまで歩くか悩み始めたその時
突然
花畑が途切れた
途切れたという言い方は正しくない
さっきまで見えていた花畑が消えたのだ
歩みを止め振り返るとそこにはちゃんと花畑がある
さて何が起きたのか
何が起ころうとしているのか
しばらくその場に佇んでいると雨が降り出した
柔らかな金色の光を浴びて黄金色に輝く雫が降り注ぐ
すると虹が架かった
丁度足元から空へ吸い込まれるように上へのびる虹の橋
これを渡ったら完全に生が終わる
そう思うと虹の橋を渡ることが躊躇われた
ふと花畑が途切れた先を見るともう1本の虹の橋が見えた
丁度足元から深淵へ吸い込まれるように下へのびる虹の橋
水面も無いのにまるで反射しているかのような2本の橋
何となく下から呼ばれているような気がした
好奇心が勝った
どうせ生が尽きるならと腹を決め下の橋へ歩を進めた


―――死神洞窟ツアー [序]


               #69【空が泣く】【花畑】

9/17/2023, 2:48:18 PM