霜月 朔(創作)

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隠された真実




冷たくて残酷で醜い、
世の中から見捨てられ、
街の片隅のゴミ捨て場で、
残飯を漁る野良犬の様に、
生きるだけだった私。

そんな私を、
人間として見てくれたのは、
貴方が初めてでした。

私に手を差し伸べる程に、
貴方は優しく、そして、
脆かったのです、

当たり前に、人と人とが、
憎み合い奪い合う世の中で、
残酷な人間のふりをして、
生きていくには、
貴方は優し過ぎました。

だから。
貴方の心が壊れてしまう前に、
私の手によって、
この醜いこの世から、
貴方を、救ってあげます。

月の綺麗な夜でした。
私は微笑み、
貴方に、冷たく光る銀の刃を、
突き立てました。

私は貴方を、
殺したくは無かった。
苦しみから救いたかった。
それだけなのです。

私は、
真っ赤に染まる貴方を見詰め、
貴方の最期の時まで、
微笑み続けます。

貴方を救いたかった。
でも、本当は。
呼吸も、鼓動も、生命も。
愛しい貴方の全てが、
欲しかったのです。

これが、私の、
優しい微笑みの仮面に、
隠された真実。


7/14/2025, 7:37:55 AM