moooosha

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抱擁。
お互いの吐息で
呼吸をしているような近さ。
目と目が合うような距離もなく
体温を共有している。


「これもキスみたいだね」


「なにが?」


「……わかんないなら、いい」


拗ねたような声とは逆に
首の後ろにかけられた
両腕の力は、強まった。
2人の間には肌しかない。
甘やかな香りが動く。

深く呼吸をすると
もともと1つの塊であるかのように
二人は揺れる。

左肩の辺りに収まっていた彼女の
湿り気を帯びた声が届く。


「して、くれないの?」


そう言って顔をあげ
左頬を擦り合わせてくる。


「なにを?」


わざとそう、口にした。
瞬間、首にかけられた腕の力が
ふにゃと緩み、溶けるように彼女が動く。
頬とも、唇ともつかない場所に
はっきりと何かが触れた。

試すような態度をとったことを
後悔した。

素直じゃないタイプに弱いのは俺の方だった。




【KISS】

2/4/2024, 4:25:16 PM