Open App

「なああんた、ずっとこのままでいいって、本気で思ってんの?」

 ひっきりなしに車が行き交う交差点。
 その歩道に立つぼくに、少し離れたところに立つ彼女が、突然話しかけてきた。
 その声は、女性にしては低く掠れていた。服装はライダースジャケットに細身のパンツ。肩まで伸ばした茶髪はぼさぼさだ。

「……えっ」

 誰からも見向きもされない日々に慣れ過ぎていて、不意打ちに動揺した。
 まさか、ぼくに話しかける人間がいるなんて。

 返す言葉に迷っていると、彼女はしびれを切らしたように大股でこちらに寄ってきた。

「『えっ』、じゃないよ。あんただよあんた。目が合ってるだろ」

 怖っ。ガラが悪すぎる。
 逃げ出したいが、足がうまく動かない。

 ……足が。

「……足元を見てみなよ。これ全部あんたのためだぜ」

 そこには、山ほど積まれた花束、お菓子、メッセージ。

「みんなあんたが大切だったんだな。

なあ、ずっとこのまま、ここにいるつもりかい?」





『ずっとこのまま』

1/12/2024, 2:59:25 PM