幸せな気持ち。
誰かに会いたい気持ち。
たくさん話をして、お互いに笑顔で過ごしたい気持ち。
誰かのために頑張って、感謝されて認められて、自分をもっと好きになれそうな気持ち。
秋晴れの空の下、何もかもがうまくいくんじゃないかと勘違いしてた。
空が晴れ渡っていても、悲劇は起こるべくして起きる。
ラーメンを食べていたら、隣の席でおっさん同士の喧嘩が始まった。
おいおい勘弁してくれよ、と思いながら避難すべきか考えていたら、おっさんがおっさんを突き飛ばして、突き飛ばされたおっさんが俺のラーメンを吹き飛ばした。
マジかよ。まだ、二口も食べてないのに。
とりあえず、エスカレートしそうな二人を宥める。
「皆の迷惑になるからやめましょうよ」
「うるせぇ!関係ない奴は引っ込んでろ!」
いやいや、ラーメン吹っ飛ばされて、かなりダメージ食らってるから、関係なくはないのよ。
でも、メンドくさいから言わない。
店員が厨房から出てきて止めに入った。
かなりの巨漢。こんな店員がラーメン作ってたのか。
チャーシュー頼めばよかったかな…なんて失礼極まりなく。
巨漢店員のおかげで、おっさん達の喧嘩は瞬時に治まった。
俺の仲裁はこんなにも無力なのね。
ラーメンは、店からの厚意と謝意で、新たに作り直して提供された。
しかも、グレードアップしてチャーシュー麺。
何の力にもなれなかったんだから、店から礼を言われる筋合いはないのだが、当のおっさん達は、喧嘩を止められたらすぐに仲直りしやがって、俺に謝ることもなく二人仲良く店を出ていった。
何なんだよ、まったく。
食事を終えて店を出ると、清々しい空が広がっていた。
幸せな気持ち。
誰かに会いたい気持ち。
たくさん話をして、お互いに笑顔で過ごしたい気持ち。
誰かのために頑張って、感謝されて認められて、自分をもっと好きになれそうな気持ち。
秋晴れの空の下、何故か、「まあいいか」とすべてを許す気持ちになれた。
チャーシュー麺、美味かったな。
またあの店に、食べに行こう。
10/18/2024, 12:19:34 PM