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子供の頃は


幼い頃の僕と君はどこに行くのも、手を繋いで歩いた。
そんな僕と君を見て、お母さんや周囲の人達は。

『可愛いね』

『仲良しで良いね』

なんて、よく褒めてくれた。
それは、僕と君の関係が特別なものだって言われてるみたいで。
幼いながらに、君への独占欲があった僕は嬉しくて堪らなかったのを、よく覚えている。

でも、少しずつ、大人に近づいていくと。

「ねぇ、手繋ごうよ」

「……ヤダ。人多いじゃん」

「だから、はぐれないように、でしょ?」

「……はぐれないよ。俺達、もうそんな子供じゃないんだし」

なんて。
僕が手を繋ごうと誘っても。
いつからから、君は顰めっ面で首を左右に振るようになって。
それがとても寂しい気持ちになる僕。

……どうしてなの?
小さかった頃は、君も楽しそうだったし。
母さん達だって、喜んでくれていたのに。

僕が寂しさから、手をブラブラとさせていると。
そんな僕の腕を彼がぎゅっと掴んで。

僕の顔をじっと覗き込んでくる。

「……人がいないとこなら、手を繋いでも良いよ」

なんて。
薄っすらと頬を染めた君が可愛いくて。
僕が思わず、彼を抱きしめそうになれば。

「っ、バカ。それはここじゃもっと駄目だろ!」

「ってことは、ここじゃなかったら良いの?」

僕の弾んだ声に、顔を真っ赤にした君がこくりと頷いた。


                      End

6/23/2024, 11:24:00 PM