真っ赤な太陽を背にした幼馴染は僕に言った。
「実はずっと言えなかったんだ」
生ぬるい風が肌に触れ、カナカナと虫の声が聞こえるとある日のこと。久しぶりに会った幼馴染と談笑していた帰り道。蒸し暑い夕暮れに、じわりと汗が滲み、僕は息を呑んだ。
彼女からただならぬ雰囲気を感じ取ったからだ。
「だけど、いいんだぁ。もう終わることだし」
何を言っているのか、僕にはわからなかった。だから何も言い出せなかった。僕には彼女の表情はよく見えない。それでも声のトーンからひどく悲しそうなのは伝わった。
「楽しかったよ、ごめんね。ばいばい」
彼女は一方的にそう言うと、僕を置いて走り出してしまった。
翌日、彼女が転校したことを知った。
数年経った今でも、あの彼女の声が耳から離れない。
《忘れられない、いつまでも》
5/9/2023, 2:22:06 PM