こんな夢を見た。
もったりとした水面に仰向けで浮かんでいる。
表面の粘膜はぴんと張っていて、自分の周りだけ、自分の輪郭に沿ってくぼんでいた。
それ以外は、スクリーンのように平坦だ。
平原からのぞむ地平線はここにある。そう思った。
旅人たちは、いま自分がいるこの場所に、夕日が沈むのを見て、雲の行く先を見送るのだ。
顔だけ動かして遠くを眺める。何もない。
ここから歩いていけば、草原に出るか、もしかしたら浜辺に出るかもしれない。
地平線から見る、地平線。ちょっと可笑しかった。
遥か遠くで旅人たちがこの地平線のゴールに焦がれているのが想像できる。彼らはたそがれているはずだ。
行ってみよう、そう思って身を起こす。
こもった音がして、水面下へ体が呑まれた。自分を支えてくれていた膜が破れてしまった。
重みに従って沈んでいく。
苦しくはなかった。視界は澄んでいた。
頭上の破れた膜はもう塞がっていた。
自分はてきとうな方角へ歩いた。水面なのに、歩くことができたのだ。
水面に地平線はない。ちょっと寂しい気分になった。
地平線を目指す旅人を迎えに行こう、自然とそう決めた。
目覚めると、そこは家のベッドで、窓を開けるとたくさんの建物が見渡せた。
建物を透かして、地平線を夢想した。
1/23/2024, 11:15:11 AM