【後悔】
人間生きてれば後悔は誰にでもある。
この年になっても、時々は後悔する事がある。ただ、大きいか小さいかで左右される。小さい後悔は必ず忘れている。というより覚えていない。大きな後悔は、なかなか忘れないものだ。人によってその種類は様々で、言葉にしないと分からない部分がある。あの人はどんな後悔をしたんだろうとか、彼はいつか後悔するなとか。
私の後悔は、今のところひとつだ。若い時はあれもこれも後悔しては悩んだ事もあったが、時間とともに風化していった。
ひとつの後悔とは、去年、亡くなった母の事だ。母は人格者だった。全体を見極め、正しい判断ができる人だった。それにユーモアがあった。母といると気持ちが楽になった。笑顔になれるなら、まだ大丈夫と思ったものだ。母は、自分が元気なうちに理想的な死に方を私たち姉妹に紙に書いて説明した。延命はするなと。我ながらいい人生だった。悔いはないからと、笑っていた。そんなふうに思えたらいいなと羨望の眼差しで母を見つめた。その1年後、母は食事が取れなくなった。それまで普通に生活をしていた。県外にいる私は、何となく帰郷した。久しぶりに帰る実家は、いつもと同じで、母の作ったご飯を時間をかけて食べた。その時、私も病気を発症していた。打ち明けるべきか迷った。そんな時、母は必ず何かあった?と聞く。何でもお見通しなのだ。言わなくても分かると昔からそう言っていた。母に隠し事はできなかった。正直に打ち明ける。母の顔が曇るのが罪悪感になって胸の奥に残った。言わない方が良かったかな、、心配かけたくなかったのに、ごめん。その日は、そう言って床についた。夜、トイレに起きた。壁のカレンダーに私の来る日に印があった。手書きのハートのマークで。すごく嬉しかった。私が帰って来るのを楽しみにしていたんだと思うとじんとした胸の痛みと目頭の熱さで眠れなかった。元気でいてよね。2日ほど泊まって私は自分の家に帰った。半年後、母は亡くなる。あの時、本当の事、言わない方が良かった?元気だよって、平気な顔してた方が良かった?答えをくれる母はもういない。でも、母の思いは、私の胸にちゃんとしまってある。母を思い出すと何とかなるって思う。辛い時、挫けそうな時、母を思い出す。「幸せは、いつも、自分の心が決めるんだよ」そう言ってた。
だから、後悔する事があっても、私は前を向ける。人生に正解はない。後悔があったっていい。間違う事もある。それでも、明日は来るのだから、クヨクヨ悩むより、後悔もまとめて、結果オーライで行こう。
5/15/2026, 10:59:54 AM