お題《時を告げる》
時の歯車が狂いだす。
なんて滑稽な物語だろう。
「――騙したの」
蒼白の表情で、やっとの思いで紡ぎだした少女。
目の前にいる青年はにこにこしているのに、氷のように冷たい。
「人聞き悪いなあ。オレはちゃんと、君の望む恋人だったでしょ」
“やさしくて、あたたかい。一緒にいると、すぐ笑顔になれる人がすき”
ちがうちがうちがう――……私が!
私が本当に望んだのは!!
「ソルトは、こんなこと望む人じゃないっ」
「――君の知ってる“ソルト”は、でしょ。君は一体“ソルト”の何を知ってるの?(時は告げた)」
「ソル……?」
「夢は終わりだよ。――もうすぐ夜明けだ(さよならオレが、ほんとうに愛した人)」
時は告げる。――終わりの始まりを。
9/6/2022, 3:57:48 PM