「もう、僕に関わらないで。」
その言葉を聞いた時、私は何も言えなかった。ただ、君の優しさに涙した。
「久しぶりだね。」
私は何事も無かったように、彼の居る部屋に来た。彼は驚いた顔を見せたが、すぐに険しい顔をした。
「何でここに来たの?」
当然の反応だ。私は先日、彼に拒絶されたのだ。それでも会いに来させたのは彼への執着心だろう。
「お見舞いだよ。それと、君と話をしに来た。」
「知ってたんだね、病気の事。黙っててゴメン。」
思っていたよりも素直だ。元々君は、嘘が苦手だったけ。そんな所も君の優しさだ。でも、優しさは時に人を苦しめる。私はその一人だ。
「あと、どれくらい生きれるの?」
「良くて2ヶ月。」
彼は俯きながらも答えてくれた。でも、その声は震えていた。
「何で黙って、私から離れようとしたの?」
「君には僕が死んだ後、泣いて欲しくないから。ずっと笑顔でいて欲しいから。でも、君と会わない日々が続く程、君と離れたくなくなるんだ。」
真っ直ぐな思いに、頬が熱くなる。それと同時に、愛しさが込み上がる。
「本当に馬鹿だな〜。そんな事で、嫌いになんてならないよ。」
この言葉を聞いて、彼は泣き出した。私は彼の涙を拭いだ。彼はありがとうと呟いていた。
あれから2ヶ月後。彼は亡くなった。そして今私は、彼の葬式会場の隅にいる。
「こんな思いをするなら、優しくして欲しくなかった。」
平気と言っておきながら、結局は耐えられなかった。自分の身勝手さに嫌気が差した。自嘲しながらも、涙が止まることはなかった。
5/2/2024, 11:48:18 AM