彼はいつも嬉しそうに私の名前を呼んでくれる。私は普段苗字でしか呼ばれたことがなかったから、それが特別な事で、とても嬉しかった。だから、私も名前を呼ばれると笑顔になるのだ。
「今日も貴方の笑顔は可愛いですね」
「あなたが私の名前を呼んでくれるからね」
両親以外で、私の名前を読んでくれる存在。それは私にとって彼だけだし、彼にだけ許しているような気がする。
「そういえば、俺の名前を初めて呼んでくれたのも貴方でしたね」
「そうなの?」
「はい、かなり幼い頃だから覚えていないでしょうけど」
お互いが名前で呼びあえる関係。私たちの間を隔てるものは何一つなく、いつも傍に居るのが当たり前のようなものだった。
テーマ「私の名前」
7/21/2024, 9:20:38 AM