作品No.242【2024/11/28 テーマ:終わらせないで】
※半角丸括弧内はルビです。
冬柚希(ふゆの)が、俺の手を摑む。ひんやりと冷たい手だった。
「終わらせないで」
その一言を冬柚希が発した瞬間、俺の意識は覚醒した。
「夢……か?」
そう呟いてから、当たり前だ、と気が付いた。冬柚希はもう、いないんだから。
わかっているのに、手には、冬柚希の冷たい手の温度が残っていて、俺は現実味のない場所にいるような気がしてしまう。
冬柚希に会いたい。冬柚希の元にいきたい。
何度そう願っただろう。
「冬柚希は、それを願ってないんだろうな」
あの言葉は、そういう意味なのだろう。それでも俺は、多分繰り返すのだと思う。
己の命を、自ら終わらせる——最愛の人が望んでいない行為を、この先も。
11/28/2024, 2:51:04 PM