『忘れたくても忘れられない』2023.10.17
本気で好きだった。だからこの関係もずっと続くのだと思っていた。でも、バレンタインデー当日にフラれた。これまで付き合ってきた女の子と同じ言葉を言われてフラれた。しかも自分の誕生日にというダブルパンチ。
これを忘れろというほうが無理な話である。
今でこそ笑い話として話題に出しているが、その実はそれなりに気にしている。
そんな話を年上の友人にすると、おかしそうに笑い飛ばした。
気にしてるから笑うなと憤慨するが、彼はよけいに笑みを深める。
「お前、そんなに繊細なやつだったんだな」
かわいいなぁと付け足して、ワシワシと頭を撫でてきた。
「今もその子のこと好きだったりする?」
「いや、さすがにそれは」
もう一度、いい仲になりたいとは思っていない。たしかにその彼女を忘れられないのは事実ではあるが、そこまで執念深くないし女々しくないつもりだ。
あくまで一つの『想い出』として忘れらないのだ。
そんなことを重ねて伝えると、彼は微笑ましそうにそうかと頷いた。
「若いうちはいろいろ恋愛経験をして大人になっていくもんなのさ」
「それってアンタとのことも?」
「どうだろうね」
嫌味をこめて聞けば、彼ははそうはぐらかした。
もし、将来この関係に終わりがきたとしても、彼とのことは忘れたくても忘れられないことになるのだろうと思った。
10/17/2023, 10:46:55 AM