運命

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風にあおられて前髪が崩れる。手櫛で軽く撫でる。蝉の鳴き声が空気を空間を振動させる。蝉が一音一音発する毎に自分の体が微かに振動する。振動圧で体が重い。黒光りするアスファルトに吸収されていく。風で木々が震えるたびに鳴き声の波が引いてゆく。額から頬、顎へ汗が流れ落ちる。地面に染み込む直前に微かに地面に雫が弾む。
風にあおられて縄から解放された風船のように体が浮き上がってゆく。意識が遠のく。徐々に木の幹に近づいていく。蝉の声が振動が大きくなっていく。蝉の声が止んだ。目を開けると目の前の大きな熊蝉がこっちを睨む。プラスチックで作られているような輝く外骨格は蝉の体内のエネルギーを蓄えて今にもはち切れそう。次の瞬間熊蝉が声を出しながら飛んでいった。目が覚めた。蝉の叫びを聞きながら帰路を後にした。

7/17/2025, 11:40:51 AM