ピアノの音を聞くと昔のことを思い出す。
親の都合で田舎に引っ越した
車の通りは少なく
隣のに2、3件の家を除けば周りには田んぼしかない
コンビニに行くまでに車で20分もかかる
自転車で10分程のところに小さな商店街らしきものがある
そんな田舎だとやることなんて大してない
学校のない日は、家でゴロゴロとする日々を送っていた
ある時窓を開けていると、隣の家からピアノの音がした
拙い音色、間違えたのか少し前からまた始まる曲
聞いた事のない曲だが、そよ風と一緒に僕の部屋に入ってくる
何も無い日常を心地よく彩ってくれた
誰が弾いているのか気にはなったが調べようとしなかった
誰が弾いているのか分かったら、何か変わってしまうと思った
ある日のこと、お使いからの帰り道
しばらく前より上手くなったピアノの音が聞こえた
隣の家の窓が空いていて、ふと見てしまったのだ
黒い髪の少女がピアノを弾いていた。
曲が終わり視線に気がついたのだろうか
彼女と目が合った
その時の僕は何を思ったのか逃げるようにその場を後にした
「また、あの日のこと?家に帰ったらあの日の曲を弾こうか?」
隣にいる女性かそう言って笑った
『君の奏でる音楽』
8/13/2024, 11:38:13 AM