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この道の先に



様々な人で賑わう歓楽街を早足で駆け、周囲を見渡し、素早く路地裏へと入る。
そのまま早足で突き進むと、さっきまでの賑やかさが嘘のように静かになり、私の足音が辺りに響き渡った。

しばらく歩き、一軒の小さなお店の前で立ち止まった。
私の頭の中で大勢の過去の私が訴えかけてくる。

もうやめて。
今ならまだ引き返せる。
これ以上罪を重ねないで。

彼女たちの悲痛な訴えを私は鼻で笑い、店へと入る。

「いらっしゃい、いつもの?」

店主さんの問いに私は頷いた。

いつもの席に座り、持参した本を読んで時間を潰す。
彼女たちの悲痛な訴えはいつの間にか消えていた。

一歩でも踏み出してしまったら、もう後戻りはできない。
辿り着く先に絶望と後悔しかないと分かっていても、私は歩みを止めない、いや、止められないのだ。

だって、私はもう取り憑かれてしまっているのだから。
この、甘く蕩ける欲の塊に。

「はい、スーパーウルトラデラックスパフェ」

「待ってましたぁ〜!」

テーブルに置かれた巨大なパフェに目を輝かせ、私は大きなスプーンを手に歓声を上げた。

他にお客さんが居ないのをいい事にコーヒー片手に正面の席に座った店主さんが、恥じらう事なく大きく口を開け、満面の笑みでパフェを食べる私を眺めながら呆れた声で言った。

「毎週来てくれるのは嬉しいけどさ、そんな高カロリーなもの頻繁に食べて大丈夫なの? 後、危ないから歓楽街と路地裏を近道にしないでって何度も言ってるでしょ」

「大丈夫だってぇ〜、店主さんは心配性だなぁ〜」

7/3/2024, 6:56:04 PM