あなたに伝えたい事があった。
全てに絶望し、死を覚悟しながら諦められなかった。
久しく感じることのなかった気配が傍らにいる。
この邸宅の主に助力を申し入れ、あたしの救出をしたのだと聞かされた。その中には邸宅の主に仕える同胞、仕えていた君主____番たる彼がいた。
「……あたしの事など忘れているかと思ってた」
「忘れるわけないだろう。君は俺の番だ。」
「なら、あたしが苦しんでいる時に何故助けてくれなかったの」
「____それは、」
分かっている。これは優しい彼を困らせしまう八つ当たりだ。政略結婚で娶ってくれたのだから、それ以上を望まないと決めたじゃない。
彼を苦しめる事は本意じゃない。
「君が操られて何をしたのか、俺は知っている」
「……!?」
「君の犯した犯罪行為を目撃した。だからといって君を咎める気にはならない。」
「____何故!? 誤りがあるのであれば……」
「正すべきだと分かってる。その意味を君は分かっているのか? やっと取り戻せた半身を手放せというのか?」
苦しそうに顔をしかめ、覆いかぶさる彼の姿に何も言えなくなる。自分の発した言葉がどれだけ彼を傷つけたのか、気付くのが遅かった。
「………大和、あたしは………」
「傍を離れようとしないでくれ。俺は君を手放すくらいなら罪人になっても構わない。」
真摯な真っ直ぐな愛は何も変わってなかった。
時を経て深まったからこそ、互いに手放せなくなった。
彼の首に腕を回せば、頭をそっと撫でられる。
あたしは耳元で密やかに囁いた。
「……言われなくても離れない。」
体を起こした彼に抱き寄せられ膝の上に乗せられた。
柔らかく微笑む彼を見てから身を委ねれば、彼は嬉しそうに声を上げて笑った。
「おかえり。」
「……ただいま。」
とある人外の番(夫婦)のお話。
(本編の)後日談的なもの
5/19/2025, 11:30:43 AM