青波零也

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 こいつを、花のようだ、と言うやつがいる。一人じゃなく複数の評価な辺り、まあまあ共通認識足りうるらしい。
 わからなくはない。誰もが振り向くような、とは言わないまでも、それなりに目を引く美貌。それも、派手というより素朴で清楚な印象の美人なものだから、冬の終わり、春の始まりにそっと顔を出す一輪の白い花のようだ、という評価も理解はできる。
 だが、そういう評価を下すやつは、大概重要なことを見落としている。
 冬の終わりに真っ先に顔を出す花なんて、やたら生命力に満ち、力強く根を張っているに決まっているんだ。
「ごめんなさい、少し遅れてしまったわね」
 かくして、こいつは今日もいけしゃあしゃあと言い放つ。俺が散々かけてモーニングコールの回数も、なんならこいつの妹さんにまで連絡を入れて、言葉通りに叩き起こしてもらったということも、おくびにも出そうとはしない。
 だが、その図太さがあるからこそ、俺たちの「リーダー」足りうるともいえよう。
 大地にぶっとい根を張り、仮に手折られかけてもただでは終わらせないだろう我らがリーダーは、俺たちの顔を見渡して、花のような笑みを浮かべる。
「さあ、今日の潜航を始めましょう」


20250224 「一輪の花」

2/24/2025, 11:43:50 AM