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『ひそかな想い』

 周りを見渡しても川などの水源は無く、荒れ果てた大地には緑は少しも見えない。あるのは銃弾とその痕、爆発物が使われた痕跡、最後に遺体と流れた血。

 そんな中で私達はそれぞれの武器を抜き、戦場へ赴く。互いの尊厳と想いを賭けて。

 敵は私達の国の数倍は力のある国、アースドアレス。それに対する私達が所属する国、ユメミヨスガは現在、アースドアレスと同等以上の戦争をしていた。

 ユメミヨスガの上層部の見解ではすぐに負けるのではとまで言われていた戦況は熾烈を極めている。

 ユメミヨスガがすぐに陥落しなかった理由。それは単純明快。一般兵士の数百、数千に匹敵するほどの実力を持つ人がいたから……らしい。

 ……あまり私の紹介を豪奢に飾りたくないのでこれ以上はしない。いや、したくない。

「うああああああああ!」

 目の前から敵兵が走ってくる。私はそいつの振った剣をいなし、カウンターとして首に一閃を見舞う。

 私は、戦争なんて早く終わらせたい。他の奴らと違う理由かもしれないが、それでもこの想いは消えない。

 首を失った体は私へ倒れてくる。せめて優しく寝かせてあげようとその体を受け止めようし、手を広げ——

「ッ!」

 瞬刻、私が右へ飛んだのと同時ほどで先程の敵兵の体を銃弾が貫く。

 私は一回り体が小さく、敵兵に隠れて私の姿は隠れていたはず。

 だが、その銃弾の軌跡は私ほどの身長である人間の急所を正確に捉えていた。

 そんな事ができる、そして私の事をよく知っている人物は一人。

「君とは、こんな所で会いたくなかった」

 彼女はそう言い、銃弾のリロードをする。その風格は他の兵とは一線を画していた。

「……私も」

 私は戦争を早く終わらせたい。その理由は——

「貴女と私は、争わなければならない運命なのかな?」

 この心に秘めているひそかな想いを、貴女に言いたいから。



 

 

2/20/2025, 6:54:06 PM